広告代理店のスタンスの違い

そもそも「広告代理店」とは「マスメディアとクライアントの仲介代理人としてマスメディアの広告枠(新聞・雑誌の広告欄、テレビやラジオのCM枠など)を売買する」というビジネスとして誕生しました。
しかし、日本とアメリカとでは「広告代理店は誰の立場を代理しているのか」という基本スタンスに若干の違いがあるようです。
日本もアメリカも、初期の広告代理店は新聞広告の代理購入(クライアントの代理として広告枠を買う)によって業務を拡大してゆきました。
しかし日本では、その後大手代理店の多くが「メディア側の代理人として広告枠をクライアントに斡旋する」というメディアブローカー的なスタンスを取ったのに対し、アメリカでは「クライアントの代理人として必要に応じてメディアの広告枠を買う」という性格が強くなっていきました。

このためアメリカ(および日本を除く先進国各国)の広告代理店には「一業種一社」という原則があります。クライアントの代理人であるならば、クライアントの競合になる可能性のある同業種のライバル企業の広告を扱えるはずがないからです。

これに対し「メディア側の代理人」というスタンスを取るのであれば、むしろ一業種一社というルールは社会的公平性を欠くことにもなり兼ねません。日本の大手広告代理店の多くが一業種複数を扱うのはこのようなスタンスの違いが生んだ慣習であると思われます。

ただし、広告代理店がメディア側のスタンスに立つことは決して悪いことではありません。限られた広告枠を最大限に活用する企画を立案し、その企画がもっとも効果を発揮するであろうクライアントを探して売るといったような積極的ビジネスも成り立つからです。

しかし、私たちビーンズでは「クライアントの代理人として、最大限の広告効果を発揮するため、あらゆるメディアを最大限に活用する」という欧米式のスタンスを取っています。
もちろん、あらゆるマスメディアを取り扱ってきた長年の経験から、限られた広告枠や予算を最大限に活用するというノウハウも十分に熟知しています。

CMコンセプトの違い

日米のCMを比較すると、日本のCMはよく有名タレントを起用し、そのイメージを利用して一瞬で世界観を作り、その中で商品を紹介するという手法を取ります。
これに対し、アメリカのCMは30秒~60秒という長時間の枠を持っており、アイディアや映像の面白さで視聴者を引き付けて印象付ける余裕があります。そのため、商品そのものについて理解を深めさせることが可能になっています。

最大の違いは「比較広告」

日米の広告の最大の違いは、「比較広告」に対する考え方でしょう。
比較広告とは、ライバル企業やライバル商品と自社の商品を比較して優位性をアピールするという広告手法です。
たとえば以前、「自社のコーラと他社のコーラを目隠しで一般消費者に試飲してもらったところ、多くの人が自社のコーラを選んだ」というようなCMが日本でも放送されたことがあります。

このような比較広告は、日本でも「内容が客観的に正確かつ適正に実証された事実であれば問題ない」とされています。しかし他社や他の商品を誹謗中傷するような攻撃的な内容は消費者にも好ましくない印象を与えるため、あまり過激な表現は自粛されています。また「不当景品類及び不当表示防止法」によれば、他社の商品よりも優良・有利であると消費者に誤認させるような比較広告は禁止となっています。

ところがアメリカでは、競争相手をイメージダウンさせるための攻撃が広告に認められているのです。
もっとも、アメリカは大統領候補同士が対立候補に対するネガティブキャンペーンを張りあうようなお国柄で、このような攻撃広告も含めて「競争」の一環と認識されているという社会背景の事情は考慮する必要があるでしょう。
ちなみに、比較広告に対してここまで規制が緩やかなのはアメリカだけで、ヨーロッパ各国でも、日本よりは多少緩やかですが攻撃的な比較広告に対しては厳しい視線が注がれます。